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内大臣森林鉄道・鴨猪谷支線 No.01

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調査実施:2005年1月 報告書作成:2005年7月26日
       

概要

 鴨猪谷支線は内大臣森林鉄道で最長の全長14.8kmになる支線だ。開設されたのは幹線開通より遅れること11年後の大正15年。面白いことに内大臣森林鉄道の幹線や他の支線が廃止になった昭和37年以降も、この鴨猪谷支線だけ昭和42年まで運行されていた。
 分岐点である角上橋付近からスタートする支線は、内大臣川と鴨猪川を隔てる天主山から続く尾根を大きく迂回するルートを辿る。尾根を廻ったルートは合流部で県道153号より始まる林道と合流し、内大臣川と同じ緑川の支流になる鴨猪川に沿って山を登っていく。ここからは林道化されており、しばらくは線路の痕跡は見つけにくくなる。源流部の穴谷手前付近で林道と軌道跡は分かれるらしいが、地図では林道が描かれていない。下記の地図や1/25000地形図などでは実線で描かれているのが軌道跡と思われる。終点は尾根に近い「穴谷」と呼ばれる所にあるらしいが、伐採の最前線では状況に応じて線路を敷いていたらしくはっきりとしたことは分かっていない。この鴨猪谷支線を知ることになった「鉄道廃線跡を歩く]」(JTBキャンブックス)と「全国森林鉄道」(JTBキャンブックス)でも、大まかなルートが記されている他は情報は少ない。実際に踏査も行われていないので、自分で現地調査を行うにはとても面白そうだ。また、ほぼ全線に渡って道路化された幹線に比べ、道路化されていない区間を多く持つのもこの支線の魅力といえよう。
 


ポインタを重ねると重描きの線(軌道跡)を非表示にでき、本来の状態を表示します
 

机上調査

 実は内大臣森林鉄道の調査にあたって一番最初に訪れたのは、この鴨猪谷支線である。「内大臣森林鉄道・幹線」の報告書でも書いたが、私にとって内大臣林道はよく知っている道だ。また、鴨猪川に沿った林道も何度か通ったことがある。そんなよく知っている場所に「鉄道」があったとは驚きだった。まず現地へ行く前に、カシミールの1/50000と1/25000の地形図上で事前調査だ。地図で見る限り、この鴨猪谷支線は角上橋を渡ってすぐの分岐点から始まるように見える。私の記憶ではそんなところに軌道の痕跡などなかったと思う。ん?よく見ると分岐点より少し進んだ場所にトンネルの記号があるぞ??(ちなみに上記地図はデジタルマップルだがトンネルの記号はある)林道からちょっと入ったところに「森林鉄道」に「廃トンネル」のセットとは、なかなかおいしい組み合わせではないか。それでは現地へ行ってみよう。現地調査は合計4回行っており、順を追って紹介していこう。なお分岐点付近についての詳細は後述する。
 

現地調査(第1回・下見)

 今回は支線の分岐点の下見というか、入り口の確認が目的だ。しかし、分岐点角上橋に到着してみると本当にここから支線がスタートしていたのか一瞬不安になった。写真の橋は角上橋だが、林道自体は橋を渡るとすぐ右にカーブしている。鴨猪谷支線はその逆で、左手の森の中へと進んでいるはずである。林道から見ると一見ただの杉林だが、幅10mほどの平場が奥へと延びている。とりあえず突入だ。右手山側にはコンクリートの擁壁があり、左手側は内大臣川の谷になっている。平場は水はけが悪いのか湿地と化しており、杉の木も弱々しく倒木が多い。地面は一様に苔むしている。と、その時なんともあっけなく苔生したレールと枕木が目の前に現れたのである!
 

  
 

 林道から森へ入って数メートルも進んでいない。内大臣森林鉄道のレールとの記念すべき初めての出会いはなんとも簡単なものだった。まったく「あら〜、こんなところにあったのね」だ。ただ2本のレールの間から生えている杉の木が、このレールが眠りについている時間を語っているように思う。のっけから大きな発見でいい気分で更に奥を目指した。平場は1.5車線ほどの幅で続いており、コンクリートと石垣でしっかりとした路肩を保っている。しかし、山側からの倒木と土砂崩れが半端でなくなかなか前進できない。山側へ崩れた土砂を登ったり、はたまた谷側へ迂回したりでどうにか前進する。と…、倒木などの障害物がなくなった先に遂に“トンネル”が見えてきた!
 

  
 
 トンネルだ!坑門前に土砂が崩れているもののコンクリート製ポータルの立派なトンネルだ。扁額などはなく、全長は10〜15mと短いものだが、径は大きくトラックなどでも十分通行できるサイズはある。トンネルの発見に興奮しつつ内部へと入る。坑門の入口と出口のポータルはコンクリートだが、内部は素彫りのままの状態で岩盤がむき出しになっており、壁側には崩れた形跡も見られる。
 
  
 

またトンネルの中にはトタンやワイヤー、鉄筋などの資材が置いてあったが森林鉄道に関係するものは見つけられなかった。トンネルを抜け数メートルも進むと一気に幅が狭くなり、同時に落ち葉の中から枕木が姿を現した。まさに森林鉄道の“跡”になってきた。うーん。いい感じだ。もう気分は完璧に「山さ行がねが」だ(笑)。この先は道路化されていない区間が合流点まで約3.5km続いているので、当時の姿をとどめた軌道跡を期待できる。しかし折角気分が乗ってきたところだが、今回はコレで退散だ。カメラの感度を上げているので分かりづらいと思うが、実は日が暮れてかなり暗くなっている。続きは次回の楽しみに取っておき、そのときは1日たっぷりと時間をとって探索しよう、そう考えながら帰路についた。

 

つづく