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内大臣森林鉄道・鴨猪谷支線 No.02
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調査実施:2005年4月 報告書作成:2005年8月1日
       

現地調査(第2回・本調査)

 前回の現地調査で鴨猪谷支線のスタート地点とその周辺は確認できた。今回の調査予定コースは前回同様に支線の分岐点である角上橋からスタートし、鴨猪川沿いの林道に繋がる合流部までの約3.5kmを往復するものだ。合流部以降は県道153号から林道を使って直接アクセスできるため、次回の調査にとっておきたい。本日調査する分岐点から合流部までの区間は地図で見る限り林道転用もされておらず、また前回の下見の結果からしても当時の軌道の姿を留めている可能性が非常に高い。
 


ポインタを重ねると重描きの線(軌道跡)を非表示にでき、本来の状態を表示します
 

トンネルの向こう側

 角上橋を渡った林道脇にバイクを停め、靴紐を締めなおす。分岐点周辺の倒木や崩れた土砂をクリアし、前回の到達地点だったトンネルをくぐる。ここから先は正に軌道跡と呼ぶに相応しい姿をした風景が続いている。高まる期待を胸に、さあスタートだ。
 トンネルから数十メートルで路盤が崩れ、2本のレールが宙ぶらりんになっている場所に出た。足元は落ち葉や崩れた土砂などが堆積しており、たまに路肩に枕木の端が顔を出す程度だったが、実はレールがちゃんと続いているようだ。予想通りに当時のままらしく、枕木やレールは撤去されていないのだろう。軌道跡は木々が生茂る急斜面という立地のせいで日当たりが悪いのか、下草は全くと言っていいほど生えていない。代わりに落ち葉が分厚く堆積している。所々で山側から崩れてきた土砂や倒木が行く手を阻む場面もあるが、概ね歩きやすい。しかし急斜面を横切るルートゆえ、この様な半トンネル(?)の様な強引なところもある。また、山側から大きく路盤自体が谷へ崩れて喪失している所では、一歩足を掛け間違えるとそのまま谷底に滑落する危険性があり十分に注意して通行した。

地図には無かった予想外のモノが!

 所々にレールを見ることができるが、山側から崩れてきた土砂がほとんどを覆っている状況が続く。やはり廃止から40年近く放置されているだけはある荒れ方だ。と、トンネルから約20分歩いた地点で目の前の風景が変わった。なんと朱色のプレートガーダー橋の登場だ!「おお!」予想外のガーダー橋出現に思わず声がでる。更にガーダー橋の先に目をやると…!
 

  

 
 なんとトンネルが真っ黒な口をあけているではないか!再び予想外の発見に大興奮。テンションも一気に上がってきた!よし、前進だ!…しかし…渡れるのか?この橋?…ハッキリ言ってかなり怖い。長年に渡って放置されているのである。しかし、よく見てみるとレールの間には鉄製の網が架けられて、さらに片側だけだが丁寧に「手摺」のようなものも鋼材で作り付けられている。そう、人が渡れるように鉄道橋から歩道橋に明らかに改造されているのだ。恐る恐る一歩づつ橋の上を前進するが、足元も手摺も案外しっかりしたモノで安心して渡れた。橋を渡りきった先はすぐに素掘りのトンネルが口を開けている。長さは10数メートルくらいだろうか。内部は崩れた痕跡もなく安定しているようだが、反対側の出口付近に土砂と共に大木が崩れていた。国土地理院の1/25000地形図でも記載されていない橋やトンネルは現地に行かなければ、その存在すら知ることができない。現地に立った者だけが知りえることができるのだ。まさに遺構探索の醍醐味はそこにあるように思う。

当時の風景そのままに…

 トンネルを通過した辺りから、地形が更に険しいものになってきた。右手山側はほぼ垂直で崖のようだし、左手の谷側も覗き込むのが怖いほど落ち込んでいる。しかし今までとは対照的に足元はとてもいい状態だ。枕木とレールが非常にきれいな状態で残っており、今、向こう側からトロッコが走ってきてもなんの違和感もないような風景が目の前にひろがっている。まるでタイムスリップしたかの様な光景にちょっと感動。
 

  
 

再び登場

この先ずっとこのままの状態が続けば素敵だな、なんて思っていたがこの険しい地形が許すはずもなく度々路盤が谷に落ちていたり、山側から崩れていたりして難儀させられる。そのような中、2本目のガーター橋が現れた。1本目のガーダー橋と同じく20mほどの長さで、レール間の鉄網や手摺の改造も同じだ。よく見ると橋直前の路盤が崩れて喪失しているが、レールとL字の鋼材で歩道が作られている。この支線は森林鉄道廃止後もしばらく人道として林業関係者に使われていたのだろうか。更に角度を変えてこのガーダー橋の下を見てみると、コンクリート製の橋脚の基礎のようなものがある。
 

  
 
おそらくガーター橋が架けられる以前は木製の橋で、そのときに橋脚の基礎として使われていたと推測できる。このほかにもすぐ隣に石組みの橋台と思われる痕跡や、コンクリートの構造物などが複数残っており、以前は違う形態の橋が架かっていたことを裏付けている。ちなみにこの橋から内大臣林道がよく見える。ということは向こうからもよく見えるはずだ。帰りに内大臣林道側からこの橋を探してみたら簡単に見つけることができた。
 
この先どうなる?
 

 2本目のガーター橋を後にして僅かなところで、またもや山側からの土砂崩れで路盤が無くなってしまっている。「やれやれ、またか」と思ったが、よく見てみると今までとは違い規模がかなり大きい。幅20m以上に渡って崩れており、その急斜面には何の足がかりもなく谷底まで一気に落ちている。10分ほどその場で斜面を眺め、どうにか横切れないかと足場などのルートを探してみるも見つからない…。「安全第一」がなにより大切なのは分かるが、この先を諦めるのはなんとも悔しい…。しかし、命綱もなにもないので本日はここで退散。残念!分岐点よりスタートして僅か40分程度、距離は600mほどか。仕方なくUターンするも、どうにかしてあの先に行けないかばかりを考えてしまう。今日探索したほんの600mの間にトンネル2つ、ガーター橋2つもあるのである。きっとあの先にも…。考え出したら、先が気になってしかたがない。でも冷静になって考えてみたら、反対側から回ればいいのだ。そう、今回の探索の目標地点である合流部には、県道153号から林道が繋がっているのだ。その合流部から本日引き返した地点を目指せばいいのである。よし!次回探索でこの区間の全貌を解明するぞ!

 

 
 
つづく