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内大臣森林鉄道・幹線 No.04
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調査実施:2005年4月 報告書作成:2005年6月9日
       

Bブロック

 このBブロックは船津ダム緑川ダムによるダム湖によって、その軌道跡の多くの区間を水没させている(黒線部分)。「鉄道廃線跡を歩くX」(JTBキャンブックス)によれば、それぞれのダムの直下(赤の破線部分)には軌道跡を確認できることが紹介されているが、現時点では(2005.6)この区間も未調査だ。いや、正直に言うと一度現地には足を運んでいるが、時間がなかったこともあり軌道跡と思われる痕跡を発見できなかったのだ。霊台橋付近を含めもう一度調査をしなければなるまい。
 


 

 緑川ダムのダム湖の上流には、両岸に高い崖が迫ってくる“内大臣峡”がある。その峡谷の底から88mの高さに、東洋一と言われた内大臣橋が架かる。この橋は内大臣森林鉄道が廃止された翌年の昭和38年に、熊本営林局(現九州森林管理局)によって建設されたものだ。森林鉄道から林道を使ったトラック輸送に切替られ、内大臣の豊富な木材の搬出に大いに役立った内大臣橋は、当時一般の通行は有料だったそうだ。蛇足だが、この橋の欄干は旧規格のために随分と低く、下を覗き込むのは高所恐怖症でなくとも結構怖いものがある。また、過去にはライダーがバイクごと転落するという事故も起こっている。現在は安全基準を満たすべく欄干のかさ上げと、転落防止柵が設置され、真っ赤だった橋も淡いブルーに塗りなおされた。
 

 この内大臣橋の直下周辺にははっきりとした軌道跡が現存している。Bブロックで唯一詳細に調査が行えた部分だ。さて、右の地図をよく見て頂きたい。ポイントのアルファベットが今までと逆の方向から(上流側)から付いているのに気付かれただろうか。実は下流側からのアクセスは谷に下りれず不可能なのだ。ところが、地点では県道と交差しており、その軌道跡に簡単に進入できる。今回は上流側(内大臣事業所)から下流側(甲佐貯木場)へ向かって移動するレポートとなるので注意していただきたい。

地図をクリックすると別窓で表示できます。
 
霊台橋から国道218号を山都町へ向けて2〜3km走ると右手に「内大臣」への標識が出る。国道から田舎道へ右折して5kmほどで内大臣橋だ。橋を緑川の南岸へ渡り、しばらくで県道153号との十字路(地点)に出る。この十字を直進すると内大臣林道だ。ここでは地点に向かうために、県道153号へ一旦左折する。地点では進行方向に対して左後へ入ることになるので注意していないと入り口を見つけられないだろう。
 
  


 地点で県道153号と軌道跡が交わる。進行方向右手には内大臣林道へと登っていく軌道の痕跡がわずかに確認はできるが、植林された杉林の斜面となり不明瞭になる。目的の内大臣橋下へは進行方向逆の左手へ入る。
 さて、農道のように始まる軌道跡を緑川下流方向へ歩いて進む。実際に農道として使われているのであろうか、雑草など刈られており結構しっかりしている。2本の轍がしっかりと続いているが道幅は狭く、軽自動車も通れない様な気がする。
 

 しばらくは見通しの悪い杉林の中を通るが、小川を渡る小さな橋にレールが使われているのを発見した。レールは本来の役目を終えても、その地で長く利用されるものなんだなあ、なんて考えていると軌道跡脇まで緑川が迫ってきた。

 内大臣橋直下の地点は内大臣森林鉄道の幹線で最も難所だったと言われる場所だ。断崖の岩をくり貫いたトンネルが見えてきた。正確には測定していないが、幅は2mもないだろう。かなり小さく感じるトンネルは、意外としっかりとしたコンクリート製坑門だ。内部は素彫りになっており、見事にS字にカーブしている。わざわざS字に掘らなければならなかった理由は分からないが、この峡谷に鉄道を通す苦労の跡をうかがい知ることができる。


   
 
 トンネルを抜けると右手の緑川との間に畑の跡が広がる。現在は耕作している様子もなく、雑草が元気に新芽を吹いていた。本ページの1枚目の内大臣橋の写真は、トンネルを抜けしばらく進んだ地点から撮影したものだ。軌道跡は地点に近づくにしたがってだんだんと“道”から“草地”へと変化していき、着実に“藪”へと近づいていた。しかし、軌道跡の山側に連なる石垣などは残っていて、その痕跡は迷うことなく楽に追える。
 
  

 地点からは完全に藪漕ぎになる。藪が深いからと引き返したのでは某氏に笑われてしまいそうなので気合を入れて藪に突入したものの、毛虫が沢山いて参った。またトゲトゲの植物にも非常にムカつく。たまに杉林の中に入るので、その間は藪がなくなり快適になるが、倒木なども多く楽ではない。しかし、そのような中でも軌道跡の路盤はしっかりしており、ところどころ崩れているものの痕跡はわかりやすい。地点付近では、進行方向右手の緑川と軌道跡の距離が随分と近くなってきて、ダム湖が近づいてきていることを予感させた。そう感じたと同時ぐらいに、足元の軌道跡が左手山側より流れ込む沢によって、スパッと切断れた地点に出た。がけ崩れで路盤ごと流されたか?とも思ったが、足元と沢の向こう側には藪に埋もれながらも石組みの橋台を発見できた。おそらくガーター橋が掛けられていたのを撤去したのだろう。川へ下って迂回すれば先に進めそうでもあったが、状況からしてまもなく水没していることが予想できたので、内大臣橋周辺エリアの探索はここで終了とした。
 
  


 内大臣森林鉄道とは全く関係ないネタだがひとつ紹介したい。私は探索で山間部などへいく場合、極力探索地の地元の個人商店などで昼食やおやつの買い物をするようにしている。現代のコンビニエンスストアの完璧な規格・品質に慣れていると、山奥の小さな個人商店は品揃え・応対など全てに強く個性が出ておりとても刺激的なのだ。「何がでてくるかわからない」的な面白さがある(失礼かな?)。もちろんお店によりアタリハズレもあり、中には賞味期限が過ぎた食品を買うハメになることもあるが、それもまた楽しいわけだ。しかし、ただ面白半分だけで行く訳ではない。田舎の小さな商店は、地元の情報ツウであるご年配の方々が集う社交場でもあるのだ。古い遺構や廃線跡などを探索し調査する私にとっては、非常に重要な情報を知っているかもしれない方々と触れ合うチャンスでもあるのだ。挨拶し、買い物をし、きちんと自分の目的を話せば、貴重な話を色々と聞くことも出来るのである。
 さて、今回の探索では内大臣地区にある写真の商店で食料と飲み物を買い物した。このお店、店主がとても几帳面なのであろう、陳列棚にはキレイに商品が並べられ、手作りの価格表示の札が取り付けられいた。のどかな風景を前に、軒先のベンチでパンと缶コーヒーの昼食をとらせてもらった。
 


 
つづく